夏が近づくと、多くの方々が山への挑戦を考え始めます。美しい風景、爽やかな空気、そして山頂からの絶景。しかし、そんな楽しみに水を差すかのような新たなリスクが登山者に迫っています。その名もSFTSウイルス。登山者にとっての新たな敵とも言えるこのウイルスについて、しっかりと理解し、対策を講じて山を楽しむための情報をお届けします。
SFTSは、ブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類されるウイルスによるダニ媒介性感染症です。2011年に中国の研究者らにより報告され、その後2013年1月に日本国内でも感染が確認されました。SFTSV(SFTSウイルス)に感染すると、6日〜2週間の潜伏期を経てさまざまな症状が現れます。
マダニ媒介: SFTSの最も一般的な感染経路は、マダニを介してのものです。特に日本ではフタトゲチマダニやタカサゴキララマダニが媒介者として知られています。山を歩く際や草むらに近寄る際には、この点を特に注意が必要です。なお、人から人への感染もまれに報告されていますが、そのリスクは比較的低いとされています。
マダニの生息する場所(高草や草むら)を避ける、登山時やアウトドア活動時には長袖・長ズボンを着用し、裾口や袖口などをしっかりと閉じる、虫よけスプレーの利用などが有効です。
長袖、長ズボンを着用することで、肌の露出部分を最小限にする。特に足元は注意が必要で、靴下をズボンの上にはめる、もしくはズボンの裾を靴の中に入れることでマダニの侵入を防ぐことができます。
肌や服に虫よけスプレーを使用することで、マダニや蚊などの虫からの噛みつきを防ぐことができます。市販されているもので、マダニに対応していることを確認して購入しましょう。
屋外活動後は、全身をチェックしてマダニがついていないか確認することが重要です。特に、腋の下、股の間、ひざの裏などの湿った場所に注意してチェックしましょう。
マダニは高い草や低木の上に待機していることが多いため、アウトドア時にはそうした場所を避ける、または通過する際に注意深く行動することが重要です。
ペットとともに外出した際も、帰宅後にはペットの身体をチェックし、マダニがついていないかチェックしましょう。
現在、SFTSに対する特効薬やワクチンは存在しません。治療は主に対症療法となります。感染者の致死率は6.3〜30%と幅があり、特に高齢者は重症化しやすいとされます。
また、マダニに刺されてしまった場合は、速やかに正しい方法で取り除くことが重要です。無理に引き抜こうとせず、医療機関で処置してもらってください。
夏の登山を安全に楽しむため、事前の情報収集と対策は必須です。登山の際は、どのような危険があるのか必ず事前のリサーチと準備を行い、安全第一で楽しんでください。
厚生労働省 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について
厚生労働省 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A
国立感染症研究所 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)